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対談#3


商人道からみた音響の世界

 

ボーズ株式会社社長

佐倉 住嘉

×

八板賢二郎

 

(1986年に取材)

 

 

 

日本で規制される以前から、必ず車のシートベルトを着用していた。これは自分を守るためのもので規制されて着けるものではない、と当然のことを自然にやってのける。

運転していて、いいアイディアが浮かぶと、すぐにレコーダに録音する。良いと思ったことはすぐに実行するフロンティア人間。

音響の専門家ではない。どことなく日本人には馴染みにくかったBOSEの商品を、類似商品が横行するまでに売りまくった商人・佐倉住嘉は、物を売ることを楽しんでいる。味覚には一寸うるさいグルメでもある。

 

 

 

マーケティング不在の日本の音響産業

 

八板:ボーズっていう社名には抵抗はありませんでしたか?

 

佐倉:僕は何とも思わなかったのですがね。雑誌社の方などから、ボセにしたほうがいいとか良くいわれました。でも、うちのオーナーで社主の名前なので、日本だからボセというわけにはいかないですよ。逆にボーズなんて一度聞いたら誰も忘れないと思うのです。僕は、それで良いと思ったので、あえてボーズを強調したんです。

 

八板:一発で覚えてもらえる方が得ですからね。

 

佐倉:絶対必要ですね、相手に売り込むためにも。

 

八板:佐倉さんと、音響との関係は?

 

佐倉:全く関係なかったです。もともとは電気関係の輸出入の商売をやってました。

 

八板:で、音響の世界へきて、どうでしたか。

 

佐倉:非常におもしろいところでしたね。音響の世界というよりも、国内の流通というものに携わったことがなかったわけですから。日本の産業、特に電気、音響産業メーカーというのは人より良い物、より安い物を作るのがうまい。だから高度成長の時代は作れば売れたんです、日本のものは。企業としてはどんどん大きくなれる素地があった。その中で営業戦略というものが、まったくおろそかにされていたわけです。マーケティングという言葉を知っていても、実践で全然身についていない。音響に関しては相当遅れてるっていう気がしました。

 

八板:ユーザー側から言えば、現場からの意見が、なかなか伝わらない世界ですね。どちらかというと、メーカー指向で事が運ぶ。メーカーがユーザーを指導していく、そういう売り方だったんですね。最近だいぶ変わってきましたけれども。

 

 

 

先頭をきるギャンブル性の中に商売の面白みがある

 

八板:営業戦略などがあまり身についていないといわれましたが、売れる製品がひとつあると、それをただ作るだけ、あるいは似たようなものを作るといったことで終始している、ということもありますね。

 

佐倉:あのね、おもしろい話しがあるんですけど、「ぴあ」っていう雑誌がありますでしょ、あれは経営者の方が学生時代に作って、今や発行部数も何十万部という雑誌になっているわけです。それを真似して次から次にいろいろな雑誌がでてますね。で、大阪にも同じような雑誌社がありまして、「ぴあ」は東京で手一杯のために大阪では遅れをとったため、その会社が先にバーンと出しちゃった。ああいった情報誌ですから内容はまあどこも大差ないわけですが、東京では「ぴあ」と二番手との間に30〜40万の売り上げの差があるんです。ところが大阪は逆に水をあけられたのですね。

ということは、良く二番手がいいといわれますけれども、やはりコンシューマの側からすれば絶対に1番手なんです。一番手に対する信頼というのは、何ものにも替えがたいものがあるということに、私は確信を持ってます。しかし、一番手をきるというのは、常にギャンブルです。そこに商売の面白味があると僕は思うんです。

 

八板:それは、大企業では無理ですね。

 

佐倉:そうなんです、私たちはできるんです。それがおもしろいんです。身軽ですし、自分で責任も持てるし、それができなくなった商売なんて、全然面白くないと思う。それでね、この業界は趣味の商品ですから、値段を安くしたから余分に売れるっていうものじゃない一面がありますよね。

例えば洗剤とかならば安いほうが売れますね。だけどそういう種類のものではないから、一番手の良さとおもしろさがあるのじゃないですかね。

 

八板:見方を変えれば非常に危険というか、度胸のいることですね。

 

佐倉:いや、それだけに楽しいですよ。

 

 

 

既成概念にとらわれないところに可能性がある

 

八板:だけどそのためには、あらゆるところにアンテナを張りめぐらして、神経を集中させていないとだめでしょう。

 

佐倉:そうですね。潜在的に常にそういうことをしていると、何かの発端が生まれてくる。それが多いんじゃないですか。

 

八板:その場合、佐倉さんがオーディオマニアだったり、オーディオ設計者じゃないから着眼点が違うのではないですか。

 

佐倉:それは言えますね。

 

八板:その世界にどっぷりつかっていると、いつもの同じ志向、同じ観点から見てしまって、あまり新し製品って生まれないと思いますが。

 

佐倉:製品の開発といっても、私は技術的な知識がないもんですから、もっぱらアメリカとか、誰かが作ったものを、どうやったら使い勝手が良くなるかとか、喜んでもらえるかというような見方しかできない。だからケガの功名で、考えられないような発想をすることがありますよ。

 

八板:幼子がおもちゃをもらって、どう遊ぶかわからないでいて、そのうち違う遊び方を創ってしまったりすることと同じですね。

 

佐倉:同じですね。既成概念というものにとらわれないところに、可能性がありますね。

 

 

 

ぎりぎりまで追い込まれたとき商売の道も開けてくる

 

八板:佐倉さんは、良いアイディア等を見つけた場合、実行するのが早いですね。

 

佐倉:ああ、それは私がせっかちなせいなんですよ(笑)。良いと思ったらすぐやらないと気がすまないところがありますから。その代わり無駄も多いです。いざやってみて、できあがる段になってみると、なんだ、これ余所にもあったとか、思ったより良くないからやめようとか、年中そんなことやってますね。

 

八板:それも身軽な会社の良さですね。

 

佐倉:そうです。楽しいですね。でもね、ひとつの商売を新しく始めようとするとき、今までの経験からしますとね、これは儲かるといって会社を作ると、絶対にそれでは儲からないんです。必ず損をする。

で、低空飛行でもう会社が潰れるとか、もう金がなくなる、というところまで追い込まれていく。そうすると死にものぐるいになるんですね。そこから道が開けてくる。そのときにはもう、最初に自分が考えたものとは違うものなんです。それを枝から枝へ追いかけて行くうちに、ひとつの商売として成り立つわけです。そんなところには理論も理屈もないですよ。

 

八板:もうやるしかない。

 

佐倉:溺れる寸前になると、なんとか泳げるようになるもので、最初はクロールで泳ごうと思っていたのに、アップアップしているうちに立ち泳ぎを覚えてしまった。後はもうなんとか泳げるわけです。

 

 

 

商売は成長していくと最初売れなかったものも売れるようになる

 

八板:何も考えないで、ぶつかるしかないんですね。変に知識があると助けてもらうことを考えたりする。

 

佐倉:そうです。助けてもらうことを考えるからいけないんです。

 

八板:そこまで行った人は強いですね。

 

佐倉:そして、立ち上がってきたらね。そこでダメだったらもうダメですけどね。

 

八板:そういう人は付きあってもおもしろいですね。一度経験しておくと怖いものないですから。

 

佐倉:おもしろいのはね、枝葉で商売ができあがって、それが成長していくと元に戻ってるんです。気がつくと、自分が最初に売れなかったものが売れるようになってるんです。すごくおもしろい。やはり潜在的に目指してるんですね。

 

八板:ところで、ボーズの製品も佐倉さんのアイディアで作られたものもあるんでしょう。

 

佐倉:ええ、今日本で発売されているものは、802を除きまして、ほとんどこちらの要求で作ったものです。今や逆流してますよ。向こうで積極的にマーケットを紹介している。こちらのコンセプトが向こうで通用しているといえると思います。

 

 

 

自分ではよくわからないから現場の意見は貴重な情報として大切にする

 

八板:佐倉さんは、よく私たちの意見をストレートに受け入れますね。

 

佐倉:こっちはわからないですからね。そういうものを頂戴するとそれは私どもにとっては貴重な情報ですから、それを使わしていただかないってことはないと思うわけです。案外、新製品とか、お客さんの買う動機といったものは微妙な点で違っちゃうんですよ。例えばハンドルを丸にするか四角にするかといったようなことです。そういうことはやはり経験ですから、たとえば新しい仕事を始めるときなども、なにも知らないところへ飛び込むわけですから、相当なエネルギーが必要です。

だから、伊達や酔狂で新しい道に入るものじゃないですね。よく脱サラだなんていってラーメン屋なんて始めますけど、ラーメン屋だって大変ですよ。私自身も赤坂でスナックや中国料理屋やってみたけど、つくづくそう思いました。はたで見るラーメン屋と、自分でやるラーメン屋じゃ内容が全然違いますからね。

 

 

 

よい商品とのめぐりあいは運でもあるが、運は50%自分でコントロールできる

 

八板:いろいろ大変でしょうね。私も良く小さな店に入ると考えるんです。ここに1日何人くるのかのな、って。そして料金を見て、何人来なければ儲からないだろうなとか。

 

佐倉:確かにそうですよ。普通の料理屋で3回以上フルハウス(満席)にするのは大変ですよ。一見簡単にみえても相当努力がいります。場所にもよりますけどね。

 

八板:それから、良い商品との巡り合いも大切でしょう。

 

佐倉:それは運です。

 

八板:商品をうまく世に出せる運勢を持った人っているんです。他の人がやってもダメだけど、この商品がこの人と出会うとうまく売れるとか。

 

佐倉:おそらくそうでしょうね。スロットマシンと一緒ですよ。ぐるぐる回っていて、絵が合うとドーンと出る感じね。

 

八板:逆に考えれば、誰にでも運はあるのだけれど、それに気がつかない。

 

佐倉:私は運というのは、50%くらい自分でコントロールできると思っているんです。運というのは、半分ぐらい人間関係からできてくるもので誰かがこう動いたから、こっちからこうなって、というように、だんだん一つの運の流れとなるような。だから、人間関係を大切にするということだけで、自分の運をある程度制御できると思うんです。

 

 

 

 

坊主が上手にボーズの・・・・・

 

八板:あとは、マーケットを広げることですね。人がやってないところを探して広げていくことも大切なことでしょう。マーケットを取り合ってばかりいないでね。

 

佐倉:それは絶対必要なことだと思います。それによって先程の一番手をとることのおもしろさもあるし、難しさもあるんですね。とはいっても、マーケットはまだまだたくさんありますよ。

たとえばね、今度うちで出す製品は、葬儀屋さんに使ってもらおうと思っているんですが、そのヒントになったのは、昨年知り合いの葬式に行ったら、葬儀屋さんが使っていた機材が、ばかでかくて音も悪かった。それならうちでコンパクトで使いやすいものを作って使ってもらおうじゃないかというので、開発したものなんですが、宣伝に困ってるんですよ。なにしろボーズでしょう。(笑)

 

八板:「坊さん」ならまだしも、呼び捨てで坊主ですか。(笑)

 

佐倉:そうなんですよ。「おーい、そこのボーズ吊り上げてくれー」なんて言えませんものね。その辺の坊さんがみんな振り返りますよ。(笑)

 

八板:でもね、いつか見かけたことがあるんですが、最近の坊さんはバイクに乗ってますでしょ、そのバイクにBOSEのステッカーを貼って走っていたんです。笑っちゃいましたけどね。(笑)

 

佐倉:いやあ、これは冗談ではありませんね。本当にそんなヒントから、葬儀屋というマーケットが開けるわけでしょう。そういう努力をしないといけないですね。

 

八板:いつまでも劇場やホールばかりやってないでね、たとえば、体育館とか、学校とかだって立派なマーケットになるはずですよね。

 

佐倉:マーケットの拡大は今後の音響界のためにも、それを使う側にとっても重要な課題だと思いますね。

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