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会員たちの座談会#4


指定管理者時代を生きる

技術者にとって苦手な貸館の運営を考える

 

出井 稔師(宮崎)

八板賢二郎(東京)

山形  等(札幌)

 

(2008年収録)

 

八板:指定管理者制度は動き出しました。さまざまな情報が届いていますが、確かに公共ホールから変化を感じられます。

 

出井:ネガティブに考える人、ポジティブに考える人、さまざまな意見をお聞きしますが、それでもアイディアを出して、今までにないお客様へのサービスを展開している人たちがたくさんいます。

 

八板:地域住民と丁寧に接していかなければなりませんね。

 

山形:私たちは、従来から「親切丁寧に」をモットーに仕事をしてきましたが、指定管理者になってもうすぐ3年目。職員意識、施設環境が変わり、それによって利用者も変化し、徐々に良い関係になっております。

 

八板:敷居を低くする努力が必要です。

 

山形:これまでも、公共施設は「地域・市民に対して・・・」と基本構想を必ず謳っていますね。しかし、それだけでは駄目で、市民が劇場に足を運んでいただく努力が必要で、こちらから出向いてでも敷居を低くすべきです。

 

八板:周辺の商店街などとも共生する必要があります。

 

出井:私たちの会館はホール以外にもカフェや駐車場などを管理運営していますが、駐車場は民間駐車場との兼ね合いが難しいですね。それでも商店街の方々は、会館の観客が商店街に流れてくることを期待しています。

 

 

客商売という意識を・・・

 

八板:ホール技術者が、自分の給料の出所はどこかということを認識すると、自分の仕事はどうあるべきかを理解できます。

 

出井:ホールの運営は、利用する人がいて、観客がくるから成立するので、それが私たちの給料に反映されます。そういう意味では、ホテルなどと同様にお客様と接することが必要です。

 

八板:今の中野サンプラザは、そのようですね。だから成功したんです。

 

山形:民間でも公立でも、利用者あってものです。しかし、利用者が自分たちの施設だという意識を持っていただいていいのですが「だから何でもあり」「自分だけ良ければよい」というのでは困りますね。

 

八板:「自分たちの施設」ですが、「自分だけの施設」ではないのですからね。みんなの施設なので、公平に使用するためにルールがあるのです。ルールは邪魔ではない。ハリウッドで映画製作には、すごい制約があるのに、あれだけ面白いものを作っています。

 

山形:勿論です。ルールの範囲内で自由な創造を発揮していただきたい。使用する施設と設備はみんなのものですから、平等に使用してもらいたいです。

 

出井:トラブルにならないために、なったときのためにルールがあるのです。ルールの範囲内で知恵を絞ることが「創造」です。

 

八板:だからといって、ただ「ルールを守れ!」では反発を食らいますから、言葉を選んで丁寧にご説明しないといけませんね。また、ルールは利用する側に立って作るべきで、地域住民も入れて協議して作り替えてはいかがでしょう。

それから、ホールスタッフの芸術家意識とか、プロ意識が高すぎると、客商売という感覚が薄れてトラブルのもとになります。アマチュアの地域住民に対して高圧的になったりすることがありますからね。

 

山形:「こだわり」は必要ですが、自分自身の思考を相手におしつけがましく「こうでなくてはいけない」などとウンチクを申してはいけません。芸術家のこだわりは、周囲からが認められて通用するものです。自分自身で認めたって通用しない。

 

出井:主役はあくまでも利用者ということを忘れてはいけないと思いますね。その中で自分の技術を最大限に提供すべきです。

 

八板:誰しも生まれた時からプロじゃない。

 

山形:誰しもが、初めは一から覚えるのです。初心を忘れず、相手の気持ちになって、まず、できることをしてあげる。それが本当のプロというものです。

 

八板:フランスの作家ロランが、「英雄とは自分のできることをした人だ。凡人はそのできることをしないで、できもしない事を望んでばかりいる」と指摘しています。

ここで、厳しいこと言いますが、技術スタッフの地位が低いという愚痴をよく耳にしますが、果たしてそれだけの技能を持っているか疑問です。

 

出井:これもよく話題に上る話ですが、確かに技術スタッフに対する利用者の認識は低いように感じます。地位を下げているのは、不満ばかりを言って、利用者へのサービスを怠っている技術スタッフ自身のような気がします。利用者の声を真摯に受け取りながら、自分の技術を利用者が満足できるように提供しているホール技術者は周囲から認められていますよ。

 

八板:ただし、利用者の方を向いているだけではダメですね。それでは顔色ばかりうかがって、面従腹背になります。媚びてはいけません。利用者が向いている方向と同じ方向を向いて、自分の意見をどしどしと述べて、信念を共有できる良い関係になりたいですね。

 

山形:技術バカといわれるように、それしかやらない、それ以外は覚えない、関心ない、では困ります。技術者も経営者の一人なのですから、施設維持管理、窓口業務、企画事業、営業、経理のどこかを兼務してはいかがでしょうか。まずは、職場での地位を得られると思います。

 

 

労働者、経営者の意識を・・・

 

八板:技術者はホールの顔です。だから、いい技術者がいるホールは評判が良くなり、利用者が増える。最近、ユニークな農業従事者が新聞に広告を出していました。そこには、「私たちは技術者であり、経営者であり、労働者である」と書いてありました、そのような気持ちが必要ですね。

 

出井:私もこの意見には共感します。舞台技術スタッフはともすると、芸術家や芸能人みたいに錯覚している方を見受けます。もっと自分自身を見つめる必要があると思います。

 

山形:全体見渡して「自分は何をするべきか」に気付いて行動することです。気がついても誰かがやってくれるだろう、なんて考えている人は相手にできませんね。指定管理者制度の下では、一つの施設を請け負った団体の個人個人が経営者、責任者、協力者です。

 

八板:ビルメンテナンスの方がテレビ局を見学して、スタッフは指令がなくとも自在に動いていることに驚いていました。私たちの仕事は、機転が重要です。そのようなことを自発的に学ぼうとしない人たちの地位確立まで手助けする必要はないと思います。本物のプロとか芸術家は営業力も政治力にも長けています。そのためには2倍も3倍も勉強、努力をしています。これまでのホール技術者のほとんどは、なすすべもなく現状維持で諦めていたように見受けます。

 

山形:アンテナを鋭くガンマイクのように遠く、広く情報をキャッチし、技術以外の仕事を覚える方向へ気持ちを切り替えてみると、意外とできるものです。

 

八板:今、技能提供だけでなく、文化施設の運営能力が求められているのです。

 

出井:今までは業界の狭い世界で不満ばかりを言い続けていて、前向きに取り組む人をけなしていたのではないでしょうか。そんなこともあり、ホール技術者の立場は世間に知られることもなく、理解されなかったように感じます。

 

八板:「ホールには恐そうな職人さんがいる」というイメージは払拭したいですね。

 

山形:たしかに一昔の「こわいおっちゃん」から脱しつつあります。まだ、昔ながらの「こだわり職人」がいることも確かです。

 

出井:そこで働く社員、業者、嘱託、パートなど、みんなでホールのサービスに努めていくように、常に切磋琢磨していかなければならないと思います。また、みんなが経営感覚を持つようにもしていかなければならないと思います。

 

山形:たしかに要求は運営、経営能力です。収支バランスを考え予算書を作成し、利用率が下がるとセールスに歩く、そして利用内容を分析し運営会議を開き、目標値までの努力をする。今までのように役所から保護された温室運営から脱皮しなければなりません。

 

 

自分の値段は・・・

 

八板:まず、自分の能力の原価計算をしてはいかがでしょう。毎日の自分の仕事の値段を計算してみる。

 

出井:最良の技術を提供するのは当然のことで、いかにホールを利用されるお客様がお金を払っても満足のいただける舞台に仕上げるかが値打ちで、それに則った時給計算をすることが必要だと思います。よく仕事を受けるときに、あの仕事はギャラが安いとか、面倒くさい仕事だとか聞きますが、その原因は自分自身の力量不足であることに気づくべきです。

 

山形:自分自身の評価は意外と甘くなりがちで、自分を追い詰めたときの評価は意外と厳しいのです。これからは常に自分を追い詰め、妥協せずに挑戦と実行あるのみです。目標を成し遂げなければ、指定管理者から外されるのですから。そのように、早く気持ちを切り替えるべきです。

 

八板:頭数だけ揃えれば間に合う時代は終わりました。

 

山形:ホールをどのように生かすかという運営能力も必要であり、末端の技術スタッフに至まで、そのことを頭に入れて仕事をしなければ通用しない時代です。また管理費内の枠で、少人数で合理的かつ効果的な運営が求められ、今までありがちな縦の構造から横の構造に変化し、さまざまな情報網を張り巡らし、1人が1人工の能力ではなく1.5人工以上の成果をだすよう要求されます。世間ではこれが普通なのですが、これまで直営や財団経営であったところはかなりプレッシャーとなっているのではないでしょうか。実際、私のところでも未だ多岐にわたり不安がいっぱいですが、仲間全体の生活があるので、路頭に迷うようなことは絶対にあってはならないと、日々考え運営を考えています。

 

八板:本当の経営者は社員とその家族を路頭に迷わせてはならないし、社員はそれを覚悟して働くべきなのです。

 

出井:必要最低限の人数で最大限のサービスを提供できるように、常にスタッフ間の切磋琢磨が必要だと思います。

 

八板:ホール以外の営利事業をやって、指定管理者を外れても社員を放り出さないように、体力を付けている指定管理者会社もいます。これが本当の経営者です。

 

 

安全作業の次なるもの・・・

 

八板:最近、ホールの事務方が舞台技術研修に大勢参加しています。この人たち、すごく熱心で、覚えも早いです。もう、舞台は危ないから素人は近寄るなというだけで、専門家の地位は保てなくなっています。

 

山形:自分たち以外を領域内に入れず威厳を保つような行為は、これからは難しくなると考えます。

 

八板:安全な体制を考えるのもプロです。

 

山形:危険な箇所・行為、安全確認・点検、禁止行為、危険物の使用方法について熟知しているのがホールにいるプロです。安全なホールにするのもプロの役目です。

 

八板:ホール技術者のあり方を再検討して、時代に即したものにしていかなければならないと思います。利用者を騙すようなことをしては長続きしません。

 

出井:また、舞台の裏方だからと、舞台袖でじっと座っていては取り残されていってしまいます。外来の主催者やスタッフとも交流をして、いろいろなことを学んで、成長しなければならないと思います。

 

八板:公共ホールは、地域住民からみれば、夢を見せてくれるところ、夢を叶えてくれるスタッフがいるところでなければならないのです。そうなることで、地域住民は指定管理者の味方になって、支援してくれます。そこからスタートして、しっかりした土台を築いてから、芸術創造へと進んで欲しいですね。

 

山形:地域住民の要求を可能な限り叶えて、気持ちよく利用していただくことが公共ホールの使命です。そうすることで、新たな使用方法が生まれ、相互の距離が近づき、信頼関係を築けます。そして、利用リピータが増えてきます。このように技術者の力で、ホールを上手に経営していけるのです。舞台は夢を実現するための世界ですから、技術者も仕事にも夢を持ち、地域住民に力を貸して、夢を実現するリーダーになるべきです。

 

出井:市民の皆さんが舞台のことや、そこで働く裏方のことをよく理解すれば、沢山のアイディアを出してくれます。その結果、自分たちが生き残れるのではないでしょうか。

 

八板:最近、2つの大きな病院に行きました。都立と私立ですが、共に医者の対応はすごくいいです。丁寧に分かり易く説明して、患者が気に障ることを言っても穏やかに受け止めてくれるのです。頭の中には多くの患者の情報が詰まっていてパニック状態だと思うのに、一人ひとり患者の身になって、一生懸命に考えて次の策を示してくれる。専門家としてのライセンスを持ち、すごい技能を持っていても、このような医者がいなければ病院経営は成り立たないのです。私たちもプロとして参考にしなければいけないでしょうね。

 

これからは、劇場技術者に十分な給料を払って、優秀な社員を確保しなければ指定管理者として通用できなくなると思います。既に、公共ホールの技術者として見切りをつけて、この世界から足を洗った若者が大勢います。また、所属会社の将来に見切りをつけて独立するベテラン技術者も増えています。

今、農産物に知的財産権を付け、開発した品種を守りながら営業するようになった。これまで、現在の劇場技術者のように痛めつけられてきた農業従事者たちは知恵を付け、次々にユニークな農業に挑戦して成功している。この人たちの手法をヒントに、私たちも発想転換をして、明るい職場を創造しようではありませんか。


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