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1988年4月

機関誌「音響」51th

 

第4回海外音響視察ツアー 

ボストン、ニューヨークのホールと劇場 

 

小野 朗 

永田穂建築音響設計事務所

 

日本音響家協会の米国音響関連施設視察旅行に参加し、ボストン、ニュ一ヨ一クのホ一ルや劇場など合わせて約10か所を巡った。ここではコンサート、観劇での印象と、各々の場所において得られた情報を簡単にとりまとめて述べてみたい。

 

 

 

ボストン・シンフォニーホ一ル(1900年) 

 

このホ一ルは音響学の先駆者であるSabineが、現在にも引き継がれている彼の残響理論に基づき音響設計を行った世界で最初のホ一ルである。諸事情により現地での折衝も空しく見学不可能ということになったがコンサートは聴くことができた。 

ホール内は満席だが、黒人の姿がほとんど見られなかったのが印象的だった。 

私の席は幸いにも?!  同行した妻の席と離れていたため、前半と後半にそれぞれ交代して違う席で聞くことができた。1部は1階の最後列から10列目の一番下手寄りの席で、内田光子とボストン・フィル演奏のモーツァルト、ピアノコンチェルト22番を聴いた。音の印象はバルコニーの下ということもあって、音が遠く、疎外感があり、音に包まれるという印象は全くなかった。 

 

2部は2階バルコニ一席で側部バルコニ一と後部バルコニ一のちょうど中間あたりの席だった。演奏はボストン・フィルによるショスタコーヴィッチ15番を聴いた。指揮者のクル卜ザンダーリンクがステージに登場するとともに客席から湧き起こった観客の拍手は1階で聞いた音とは全く違っていた。私は自分が拍手の中にいるという実感があった。ここで体験した音は、明瞭で暖かみがあり、しっとりとしていて、低音の響きも適度でバランスも良かった。$20の席だったが、$28の前方の席より、この席のほうが恐らく良かっただろう。それにしても、最後まで1階の奥で聴いていたらこのホールの印象は悪いまま帰ることになっていただろう。海外でコンサ一卜を聴く場合は、座席と演目を確認してから買い求めるべきだろう。 

 

 

 

マサチューセッツ工科大学(M丨T) 

 

日本大学理工学部助手で現在MITの研究員である杉山知之氏の案内でMITメディア・ラボを見学した後、オーディ卜リアムとチャペルを案内していただいた。 

この建築は世界的に有名な建築家エーロ•サ一リネンの代表作ともいわれるもので、MITの中心的な建物である。建設当時(1955年)、技術的に未知の世界であったシェルでスパン50mの大空間を覆うという大胆な設計が、常に技術の最先端に挑むMITの精神を表現するのに相応しいと論評された。 

 

建物は球の1/8曲面を伏せたような形で平面形は三角形である。オーディ卜リアムの中は後壁の隅が下がっていて、室内にいて構造体の形が分かるような室形である。こういった室形は音響的には好ましい形ではないが、音響的な問題については天井に吊られた浮雲反射板によって調整している。 

30数年前に建てられたが、全く古さを感じさせない建築である。 

 

チャペルはオーティトリアムのすぐ前に建てられているが、その外観はオーディ卜リアムのそれとは全く調和しない円柱形の煉瓦造である。建物の周辺を池がめぐり、そこから反射する光が壁面周辺の下部に設けられた窓から室内にはいり、優しい光が壁面を照らす構造になっている。一方、祭壇背後の真鍮の小片からなるスクリーンはトップライトからのやさしい光に輝き、天から降り注ぐ光の小片にも見えて神秘的で、実に美しく感動した。壁面は外壁が円柱形であるのに対し、音響的にうねるような曲面の連続となっており、円形であることによっておこる音響障害を防いでいる。 

また、一部の壁面は煉瓦の透し積みで吸音面となっている。このようなデザインの優れた建築でも音響効果、性能を充分考慮していることにあらためて感動した。 

 

 

 

カーネギー・ホール(1891年オープン) 

 

カーネギ一・ホールといえばかつてはニュ一ヨ一クの文化の殿堂、世界最高のホ一ルといわれた。 

ホールの中はすっかり改修が終わり、殿堂といわれるに相応しく100年前に建てられたとは思えない綺麗で荘厳なホ一ルに仕上がっていた。ホールを案内してくれた青年は、このホ一ルに誇りをもっていることが言葉のはしばしに表れていた。 

 

さらに通訳の御婦人(日本人)は力一ネギー・ホ一ルの信者ともいうべき人で、何でも数年前にこのホ一ルで歌ったことがあるらしく、そのことをさかんに案内の青年に告げていた。改修についての質問をするとその御婦人は、勝手に青年の答えの始めに「このホールは世界最高の音響効果を損なうことなく・・・」を必ず付け加えた。ホールの中の雰囲気で観客を魅了し、このような心からのファンを生んでしまう、そんな美しさを持つホールだった。 

 

 

 

メトロポリタン・オペラハウス(1966年オープン) 

 

バロック式室内装飾で3,792席のこの劇場は、客席数のうえから世界最大のオペラハウスである。基本室形は馬蹄形で1階の上に5層のバルコニ一を持っている。最上階のバルコニー席は客席数を確保するために大きく後部に広がっており、ステージ先端から最も遠い席まで約55mあるという。このような客席数を確保するための空間が、他の席に音響上の悪影響を与えずに設けられるのであれば、チケットをなるべく安くするうえでも、また悪い席でも良いから安くオペラを鑑賞したいという人にとっては、このような席を設けることは有難いことである。 

 

この劇場ではベルディのマクベスを観た。音の響きは噂どおり短く歌手の歌声が劇場内を響き渡るという印象はなかった。しかし、歌手の歌声もオーケストラの音も美しく、質の高いオベラを堪能した。 

 

 

 

ニュ一ヨ一ク・フィルハ一モニ一・ホール 

 

このホ一ルは1962年に完成したが、音響上の不評を買い、これまで5回にわたって改修が行われ、音響的にも多くの話題と、我々にとってはたいへん貴重な資料を提供してくれた。これらの改修における履歴は次のとおりである。 

 

1962年 開場、Beranekの設計による。 

1965年 Schroederによる反射板の調整・壁面形状の変更・後壁の吸音 

1969年 Schroederによる反射板撤去 

1972年 Schroederによる天井形の改善・壁面形状の変更 

1976年 Harrisによる鉄骨を残し内装新築(現在に至る) 

 

ホールの内装は意匠的には面白みがなく、天井、壁はいかにも音響上の理由から決めたというような折板形状で薄い青緑色に塗られ、バルコニーの先端はシリンダ一状で金色に塗られている。ステージ周辺は木質系で仕上げられ、客席周辺の色と 全く合わないように感じた。 

 

そして次の日の晩、我々はこのホールでコンサ一卜を聴いた。エリック•レインスドルフ指揮、ニューヨーク・フィルでハイドンの “THE SEASONS"を聴いた。席は1階の後ろから3列目で中央よりやや下手寄りのステ一ジから遠い位置だった。 

ここで聞いた音の印象は想像していたより良く、ちょうどNHKホ一ルの1階席最後方で聞く音に近かった。弦の音やソリストの声は張りがあり素晴らしかった。   

 

しかし、音が非常に遠く聞こえ、コン卜ラバスの低音、コーラス、チェンバロなどの音は物足りなさを感じた。 

ここでのコンサートで驚いたことは、Part 4 Winterの演奏途中から優雅に退場していく人の多かったことだ。コンサートの終わった時点で残っていた人は6割程度だった。カーネギーホ一ルにしてもこのホ一ルにしても一応コンサ一卜ホ一ルであるが、通路にカーペットを敷いているのはこのためかと勝手に納得した。

 

このホールは1973年にオーケストラに10億5000万ドルの寄付をしたAvery Fisherの名を冠してエイヴリー・フィッシャー・ホールと改名された。また、2015年には、ホールの改修に1億ドルの資金提供を約束した篤志家デヴィッド・ゲフィンの名を冠してデヴィッド・ゲフィン・ホールと改名されている。

 

 

 

ニューヨーク・ステ一卜・シアター 

 

1982年に音響上の理由から改修された。ニューヨーク・フィルハ一モニー・ホールの改修劇の影に隠れてしまったのか、この劇場の改修についてはあまり知られていない。その改修内容のひとつは反射音不足の改善で、天井の隙間を塞ぐために天井裏に敷きつめたシートの上に石膏を30 cm程度流し込み天井における音の吸収を抑えた。また、空調騒音の低減のためにダク卜の消音をすると共に、ダクトの遮音、防振吊りなどの対策を施した。 

 

この劇場でオベラやバレエを観ることはできなかった。その上、見学のときニューヨーク・シティ・バレエのリハーサルが行われており、劇場内の見学はその様子を遠くからチラッと見るにとどまった。したがって、音の印象は特にない。 

 

以上、ホールと劇場の印象や雑感をとりまとめて述べた。これらのホール以外にもミュージカルやライブハウス、美術館などを回りあっという間に時が過ぎた。ボストン、ニューヨークは音楽、美術、建築などの宝庫で、私にとっては興味の尽きない街であった。

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