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1982年9月 機関誌「音響」29号掲載

 

六本木ジャズイン/六本木クラシックコンサート 

(1982年6月2日~4日) 


「六本木ジャズイン」を終えて 

 

日本音響家協会会長 

若林 駿介 

 

最近のコンサートは、とかく広い会場で大勢の人を相手にという形式のものが多くなっている。ということは、アコースティックな楽器では、音量不足になるのは当然だ。ということから、どうしても電気音響に頼ることになる。 結果としては、ただ単に音圧だけは高いけれど細かい音色の変化や美しさというものとは程遠いものになりがちである。 

 

このたび、日本音楽家労働組合(現・音楽ユニオン)と俳優座劇場の提携によって、六本木ジャズインと六本木クラシックコンサートが企画され、音楽監督の野ロ久光先生から、SRに関する協力を依頼された。 

協会としても、日頃から少しでもよい音を聴衆に提供したいという目標があり、この規模のコンサートならば、理想に近いSRが可能ではなかろうか、また、プロとしての研究の場、会員間の親睦をはかる意味においても有意義なことなので、喜んでお引受けすることにした。会員有志の参加によって、機材をはじめ、人材、細かいミクシングテクニックなどが投入され、たいへん良い成果をあげられたのは、たいへん喜ばしいことである。そこには、普段の仕事では味わえない新鮮さや、会員相互による連帯感を見いだすことができたし、日本音響家協会でなければ出しえないような音がプロデュースされた。 

 

俳優座劇場そのものは、建築音響の上からみても、決してコンサートにふさわしい音環境ではないだろう。しかし、優れた機材と卓越したコントロ一ルテクニックによって、これが十分にカバーされたことは、聴衆の笑顔を見てもわかる。単なる高い音圧にごまかされることなく、あくまでも生の音を主体として、これにプラスアルファされたサウンドは、本当の意味のSRが実現されたのではなかろうか。 

 


生音楽とは・・・・NON PAコンサート 

 

日本音楽家労働組合•生音楽振興部長 

安原 理喜 

 

このたびは、日本音響家協会の多大なるご助力により、六本木ジャズインおよび六本木クラシックコンサ一トを無事に終えることができました。出演者ならびに企画スタッフ一同を代表して、貴協会に心よりの感謝の意を表したいと思います。 

この努力と研究心に満ちた「音響」誌に、私の稚拙な美辞麗句をこれ以上並べても余り喜ばれないでしょう。日本音楽家労働組合(日音労)生音楽振興部長としての公式なあいさつはここまでとして、以下、一介のオーボエ奏者として、今回の一連のコンサートに関しての感想を書かせていただきたいと思います。 

 

さて、今回の5日間にわたるコンサ一卜は「生音楽振興」を活動の重要なテーマとしている日音労を中心として進められ、共催として俳優座劇場、日本音響家協会には後援という形でご尽力願いました。当初より「生音楽」が企画の要であり、貴協会には失礼とも思える「NON・ PAコンサ一卜」を課題として企画がまとまっていきました。しかし、クラシック系の奏者である私には「生音楽」は当然であり、むしろPA入りのコンサートの方が稀なのであります。とは言え、スタジオにおける演歌やコマ一シャルの録音、テレビやラジオでのコンサートも私の重要な収入源であり(毎度、音響家の皆様には御迷惑をおかけしております)、レコ一ドを聴き、おもちゃに近いテープレコ一ダを活用し、パ一カスベリ一なるコンタクトマイクも所有しているのですから、クラシック奏者とはいえ「NON・PAコンサート」をさほど不可思議には思わないわけなのです。しかし、今回は「生音楽」を意識してPA入りのコンサート(ただし、ジャズのみ)を行ったことに意義があると思います。クラシックの2日間はもちろんPAはなしですが、マイクを見せない録音にその意志が貫かれたと思います。聴衆のアンケートに「PAらしからぬPAが良かった」、「生音楽について考えさせられた」と書かれたものを読むことは実に快いことです。 

 

反面、すべての聴衆がこれで満足であったかどうかは疑問です。オーディオ器機の発達と充実は、クラシック奏者の耳をも確実に冒しつつあるようです。目の前の現実を「まるでテレビを見ているみたいだ」と表現する子供より、コンサート会場で、「まるでレコードを聴いているようだ」と喜ぶ大人の方が増えているのかもしれないのです。 

ジャズ、ポピュラー、さらにクラシックをも含めて「生音楽」を定義づけることは、もはや困難なのかも知れません。生ビールでさえ年々変化しているのですから。 

 

しかし、それが人間の耳や舌や心にしみ入る限り、またその味を失わないよう多くの人間が努力する限り、存在すると思います。今後とも演奏家と音響家の理解と協力が末永く続くよう、私も個人として、また生音楽振興部長として努力してゆくつもりでございます。


新しい創造の場を作りたい 

 

俳優座劇場支配人 

倉林 誠一郎 

 

はじめてジャズの演奏会をやった。私はジャズについてはまったく無知に等しいのに、なぜジャズをやったかというと、これはまったくひょんなきっかけからだった。 

 

昨年、あるパーティで顔見知りの日音労の委員長らに逢って立ち話したことから始まった。ジャズのコンサ一トをやる場所がない。協力してほしい、良質なものなら協力しょうと、話は簡単に決まった。それから野ロ久光さんを中心にして会議が重ねられた。生の音楽の良さを表現するということがテ一マだったし、意見の一致をみるのも早かった。それだけコンサートに対する欲求が強かったのであろう。 

 

私たちの俳優座劇場が1980年9月に、改築開場したとき、私はこの劇場を54年に創立したときの精神を、改めて見直し、それを現代に生かすことを考えた。劇場の設計の過程でも建築設計者にまかせるだけでなく、演出家、美術家、照明家、音響家が設計の段階から参加した。経済的制約のあるなかで、一応納得のいくものを造ったと考えている。だから、この劇場としては、300人という採算のとり難い条件だが、何とか舞台芸術としてすぐれたものを上演したい。ここを商業主義的でない、文化的劇場として運営したいと考えている。 

 

いまどき、考えようによっては、ぜいたくな、世間ばなれをした姿勢である。それだけにこの劇場の運営はむずかしい。新劇が中心だが、室内楽や能、狂言、舞踊とやってきた。それぞれにアンケートをとって観客の反応を調べたが、どの場合においても良好だった。出演された方々の反応もよかった。このたびのジャズの場合においても同様で、こうした企画を続けてやってほしいという要望が多く出されている。 

 

それだけに私たちとしては意を強くして、これになんとか応えていきたいと考えているのだが、こうした企画を継続するためには、企画に参加してくれる方々の協力なしには不可能だということ、それも経済的にはまったく無理な注文をした上で の協力をお願いすることになる。何といっても300人という小さい劇場なので、こうしたお願いをしなければならないのである。 

 

この度のジャズ演奏会に協力してくれた方々に感謝したい。とくに日本音響家協会の方々の支援協力に改めてお礼を述べたい。 

しかし、この仕事も定期的に継続することによって実が結ぶので、1回こっきりでは意味がない。 

しかも無理をお願いしての上である。また、この劇場での仕事が、意欲的で実験的であることも願っているのだから、言えば欲の深い話である。 

 

こうした協力者が劇場を中心にしてできれば、そこに新しい実験劇場が生れる。こんな劇場が広い日本に一つぐらいあってもよいではないかと思っている。ご協力を切に願う次第である。


現場からの報告 

 

日本音響家協会副会長 

八板 賢ニ郎 

 

「生を主体としたジャズコンサートを企画しているが、ミュージシャンの連れてくる音響スタッフでは今までどおり騒々しい音になってしまう。そこで音響スタッフは企画サイドで揃えたいけれど、適当なところ(音響会社)がない」という相談を受けたのは、昨年の11月であった。 

 

このコンサートに私たちが技術協力することになってから、日音労との幾度かのスタッフ会議に出席した。そこでは野ロ久光音楽監督と俳優座劇場側からの「限りなく生に近いコンサートを・・・」という要望に対して、スタッフ一同の意志は強力なものとなっていった。そして、ステ一ジサイドに大きなスピーカを配置することも、ステージモニターをあまり乱用することも控えるようにと、音楽監督から要望されたのは最終のスタッフ会議であった。協会からは、客席でのミクシングをしないとの申し出をしたところ、とても感激されたりもした。最近の音響に対して、これほどまで嫌気をさしている関係者がいるものかと改めて感じた。 

 

日本音響家協会の東京地区(現・東日本支部)運営委員を中心に音響スタッフとしての希望者を募る一方、機材の手配などが進められた。 

 

機材セッティングに関して、いくつかの制約があった。まず、このコンサートの前日まで劇団俳優座の公演があり、その舞台装置の搬出がコンサ一卜の当日の午前中に行われるので、我々のセッティングの時間は短縮され、リハーサルも完全に行うことは無埋で、音合せ程度になるだろうと予測された。それに音響機器はすべてメーカーの提供によるもので、それぞれの機器の接続方法を事前に決めておかないと、それに費やす時間は馬鹿にならない。短時間にかつ完璧にセッティングをすることが、第一の目標である。そのためには、システムプランはできるだけ簡素化することとし、スピーカシステムもマルチアンプ方式はやめることにした。また、機器間の接続コードは各メーカーが責任をもって用意することにした。 

 

セッティングは、時間短縮のため人海戦術をとることとし、そのために現場の下見、劇場側との打合せを綿密にして、細かいセッティングプラン図を作成した。 

 

当日の朝、10時半には音響機器が次々と運び込まれて来ることになっている。これらの機材の搬入方法も、スタッフが右往左往しないよう、機材ごとに、どの階段で、どのように配置するかを適確に指示できるように考えた。 

 

さらに、劇場の音響特性を把握しておく必要があり、劇場側からアドバイスを受けながらその特徴を調査した。俳優座劇場は、演劇上演を目的としているので、残響時間が非常に短い。時々クラシックコンサ一トが行われているが、舞台前部の両サイドが袋状になっていて、そこで吸音され、客席に音が響いてこないらしい。だから舞台の袖で聴く音が一番良いそうだ。そんなわけで、両サイドの袋になっている部分をパネルでふさぐことにした。しかし、それでも客席の音圧分布はあまり良いとはいえない。このような場合、音の放射方向が上を向いているアルトサックスなどは、他の楽器となじまないので、そのためのSRが必要になる。劇場の音響担当者からは、音響調整室で聴いて、すこし出過ぎている状態で、客席ではちょうど良いというアドバイスを受けた。また、客席の後部は2階の調整室などが張り出しているので、デッドポイントになっている。本番中は、この場所で音を聴いて、音のバランスについて指示することになる。 

 

いよいよ6月2日、午前10時半、全音響スタッフの簡単なミーティングの後、音響機器は到着順に所定の位置に搬入され、前日の公演の大道具の搬出が終了した後、1時間半あまりでセッティングはほぼ終了した。あとは楽器の配置を待つばかりである。 

この日の演奏は、大給桜子(ピアノ)・阿見紀代子(ヴィブラホン)のカルテット、途中で堀江マミと佐藤マサノリのボーカル、村田浩のトランペット、菊地秀行のアルトサックスが加わる。第2部は外山恵子とバンジョーラスカルズで、後半にトランペットとトロンボーン、チューバが加わる。SRは、ボーカルを主として、ピアノ、ヴィブラホンを少々、バンジョーとアルトサックスはSRスタンバイと高をくくっていた。 

他はすべての録音用のマイクで、SRと録音とに2分岐。当初、TVとFMの中継が予測されたが、その場合は、ミクシングアウトを分岐することを考えていた。結局、FM東京だけが収録することになったが、協会側はPCMで、FM東京はアナログで、ミクシングアウトを分岐して録音した。 

 

さて、音合せが開始された。バンジョーラス力ルズからである。最初は響きを補正する程度だけバンジョーをSRした。やはり、もっと大きくという要望が出た。演出と協議して、ぎりぎりの線で双方納得する。ステージモニターにも注文が多く、レベルもかなり大きめである。SRしたのはボーカルとバンジョーだけであった。 

 

次は、大給桜子•阿見紀代子カルテットで、ヴィブラホンだけをかすかにSRする。途中からトランペットとサックスが加わった。サックスを軽くSRしたが、奏者がやけにマイクにへばりついてくる。途中、奏者どうしがどうも呼吸があわないと感じた。ステ一ジモニタ一をいろいろ調整してみたが、しっくりいかない。音楽監督が、いっそのことモニターをやめてしまったらどうだろうかと演奏者に指示。ボーカルだけをモニターに残すことにして音合せは再開し、客席内の音もクリア一になって、これでOK。 

 

以後は何事もなく音合せは終了した。終了後に卜ランペットの村田氏などと話し合ってみると「俺たちにモニターは必要ない、強いて必要といえばボーカルが聞こえればいいですよ」と言っていた。 

 

2日目以後は、ステージ担当者がミュージシャンとのコミュニケーションをとることにした。そこで、いろいろな演奏者の考え方をつぶさに感じ取ることができた。“天江恵子とその仲間”ではハープのピックアップのトラブルで四苦八苦したが、最終的にダイレクトボックスを入れることでOKとなった。音質も以前よりソフトになり、天江嬢は終演後、「今までにない良い音で演奏できた」というコメントを残して楽屋を去った。 

 

3日目はハ一ドな演奏家たちの出演である。予期していたが、ドラム奏者が「オレはここ」と言って舞台前部のド真中に陣取ったのには驚いた。ドラムの前を通りぬけるのも困難といったセッティングである。その横にベース、ずっと奥にピアノという楽器配置となってしまった。ボーカリストの位置をどうしようかというと、下手脇でいいだろうという。案の定、本番はメタメタで、ドラムトリオと相成ったわけである。観客席からもヒンシュクを買ったようであるが、本番前に「オレのドラムはジャズにもロックにも使えるよ」と得意になっていたが、結局はロック演奏法しか知らないのかという声も出たほどである。このような状況の中でも、SRミクサ一氏の奮闘によって、きめ細いミクシングの結果、観客席から「ピアノはナマの味がでていた。ヤマハのピアノはSRするとその特徴がなくなるが、ヤマハの特徴が出ていたからSRはしていない」という興味深い評価の声もあった。 

 

このコンサ一卜で、演奏家の立場や音楽の組み立て方など、いろいろと知ることができた。その中で “天江恵子とその仲間” のリハーサルで、キーボードの上田力は「今日はハープが中心に聞こえればよい。サックスなどSRしなくていいよ」と言って、自らも私たちの指示どおりにキーボードの音量を絞って下さったのである。その結果が素晴らしい仕上がりになった。 

 

最近は自分だけが目立とうとする演奏者が多いが、このようにしっかりしたポリシーを持ったリーダーは、音響家の意見も素直に受け入れる度量があり、そして素晴らしい演奏を聴かせてくれるものだと感心した。


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