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1981年9月 機関誌「音響」22th

 

公開討論会 

それぞれの立場から見た音響のありかた 

(抜粋) 

1980年9月17日、NHK青山荘にて 

 

        出席者(順不同/敬称略) 

           悠  雅彦(ジャズ評論家) 

           山田 幹男(スタッフZ) 

           前田  隆(ワクイ音楽事務所) 

           宿谷  一(マナセプロダクション) 

           山ロ 康義(渡辺プロダクション) 

           縄野 欣弘(ボニージャックス事務所) 

           阿久沢 実(東京労音) 

 

        司会 及川公生(日本音響家協会事務局長)

 

 

若林駿介会長:本日は各方面の方々にご出席いただきありがとうございます。我々の会は、とにかく「日本の音を良くしよう」という趣旨で始まっています。いろいろな立場からご遠慮なくご意見を出していただき大いに討論できれば、いい会になると思いますので、よろしくお願いします。

 

──以前より音楽評論家の野口久光先生から、最近のコンサートの音は大き過ぎると指摘がありました。まず、そのことからご意見を伺いたいと思います。

阿久沢:労音は聴衆の側の団体で、当然、音響の重要性は大きな位置を占めると考えていますけれど、にもかかわらず卒直に申し上げて、毎月10数回の音楽会を企画していますが、なかなか満足した音響の状況で終ったということは少ないですね。一口で言えば、『音響』(協会機関誌)で野口先生がおっしゃっていた、「音が大きすぎる」というご意見に同感で、だんだんその傾向が強まっていると思います。 

 

悠:そうですね、僕は最近コンサートに行くのが億劫になりました。一つは、コンサートが連日ありすぎて、多少音に飽きて来たということもあるのですが、もう一つは会場に行って満足な音で聴けたためしがないということです。特に最近、どうして皆、こんな音で満足しているのだろう。大体、ホ一ルの中央でコントロ一ルしているにもかかわらず、あの本当にひどい音響をいいと思って聴いているんだろうかと、その人に聞いてみたくなることもありました。きょうは、そういう人たちの集りだと思って(笑)興味があります。 

 

山ロ:コンサートの後のアンケートでも大きすぎるんじゃないかっていうのが多いです。極端な話、うちの社員の中でも、PAなしでやってみたいというのがいます。PAなしで、というと皆さんの商売をなくしてしまうみたいですが。(笑)

 

悠:ジャズの世界では、ほとんどPAを使わないというのもあります。それは概ね好評で、僕も非常によかったと思う。音楽ではダイナミックスというのが非常に重要な要素です。強弱の弱っていうのをとても聴きたい。普通のコンサ—トですと、その弱っていうものに対する神経がないですね。キース・ジャレットのコンサートでは、ピアノソロで弾き出したときに、僕らは本当に神経を集中して、会場は水を打ったようになって、その中に弱音がきれいに聞こえてくるっていう場ができあがる。ア一ティストも聴く側も一体となって作り出していくものだと思います。ただ、そういう機会が非常に少ないですね。そういうのと比べると、最近のコンサートは無神経すぎると思います。 

 

──スピーカの前で、髪の毛が音圧でゆれた。それがすごくよかったというファンもいましたよ。(爆笑)

 

悠:厚生年金(会館)みたいに上と下にホ一ルがあってジャズみたいにマイナ一な音楽は下でやるわけですが、上でロックやってる場合、こっちはすばらしいバラ一ドが始まったなと思うと、上の8ビートのバスドラがどんどん響いて来て(笑)そりゃ音楽を聴く気持になれないですよ。企画者や会場の側でも、もう少し考えてほしいですね。 

 

阿久沢:PAはレコーディングと違ってナマですから、オペレータの方は、もっと音楽を知ってほしいですね。最低楽譜を読んでオペレーションしてもらいたい。何を基準に音を上げたり下げたりしているのか。 

 

前田:僕は、必ずしも譜面は読める必要はないんじゃないかと思います。プレ一ヤーだって、外国の有名なプレーヤ一はバリバリ譜面が読めるものと思ってけど違っていました。譜面が読めるってことと、音楽性を持っていることと違うと思うんです。 

 

縄野:スコアが全部読める必要はないと思いますが、どこからコ一ラスになってとか、コードがどうなっているかぐらいはわかっておいてほしい。 

 

前田:要は、音楽の心があって、音楽を表現できればいいんだと思います。確かにスタジオ・プレーヤは初見でバリバリ弾きますけど、音楽を消化していない人がいると思うんです。それは、単なる音か音楽かという問題と同じでしょう。要は、ミュージシャンとミキサーのコミュニケ一ション、つまり何を伝えたいかっていう、それが一番重要だと思います。 

 

宿谷:マニアックに、例えば自分が昔ドラムを叩いていてミキサーになったんで常にドラムが大きいとか、ベースやってたんで、ベースは誰か来ても自分の音にしちゃうみたいな。(爆笑)こういうのは駄目ですね。 

 

前田:僕は、若干異論がありまして、僕ら音楽をプロデュースする人間からみて、ミキサーっていうのは、より個性的であるべきだと思うのです。これだけ多様化して来た中で、皆が同じ音を出す必要はない。逆に、その人にしか出せない音を出すべきだと思います。自分はジャズのミキサーなのか、歌謡曲のミキサーなのか、それがとても大切です。私の場合、演歌をよくわかってくれてるミキサーじゃないと困ってしまうわけですが、演歌だったらこういう音の組立てが成り立つというミキサーの個性がほしいわけです。 

 

山ロ:お客さんから、悪かったという言葉が少ないことを望みながら幕をあけるのですけれど、とにかく始まっちゃったら立ち入ることができないのです。全体の構成を知ってミキサー席に座ってほしい。僕なんかは、歌いながら卓を操作するようなミキサーさんが好きですね。 

 

 

 

サウンド・エンジニアは個性を出せ 

 

阿久沢:コンサートの場合の音響スタッフは、出演者側から指定して来ますよね。ですから、私たちにあまり立ち入る余地はないです。まあ、それでもいいのですが、ミキサーの方は出演者の言いなりになっている。もっと主体性を持って欲しい。まあ、いろいろ意見を言ったりすると、次から仕事がなくなってしまうからでしょうが、(笑)とにかく出演者からちょっと合図が来るとさっと動かしてしまう。自分の耳で、実際に聴衆の場所にいてコントロールしているのですから、もっと主体性を持ってほしいです。 

 

山田:いいなりPAではなく、個性をもって、もっとアーティストと喧嘩(論争)するぐらいの気持でやった方が、アーティストのためにもマネ一ジャのためにも、一番いい状況だと思う。このアーティストのこの曲は、このバランスが一番いいんだとかね。 

 

悠:アメリカなどに行って日本の状況と比較するんですが、向うのミキサーはステージでもレコ一ディングでもよくやりあっていますね。有名なエピソードで、ルディ・バン・ゲルダ一という有名なレコーデイングエンジニアがミュージシャンと喧嘩しながらレコ一ドを作り上げた。じゃあ、そのレコ一ドはひどい音かというと、とてもすばらしい音に仕上がっているんです。日本のミキサーは、ステージのリハを見るとハイハイとアーティストの言うことをよく聞いているというのが大方でしょう。意見が合わないときは論争すればいいと思うのですが、それには、ある程度の水準といいますか、知識、音楽的感性、そしてオーディオのテクニックとか、いろいろ総合して、自分の主体性を成り立たせるような音楽家概念、ミキサー概念というものを作り上げるべきだと思います。大体、駄目なミキサー、ここにいらっしゃる方は違いますよ。(笑)駄目なミキサーも多いと同時に、駄目な音楽家も多いわけです。駄目な音楽家のいうことをハイハイと聞いている必要は全くないわけで、自分を主張してやるべきだと思います。

 

  

 

サウンド・エンジニアの立場から 

 

──今度は、音響に携わっている受講者の方々、今日は会員以外の方も参加していますので、ご意見をいただきたいと思います。 

 

受講者A:うちはかなり大規模なPA屋で、パワ一では日本一だろうと思っています。(笑) PAの音はレコ一ドが基本だというのは正しいと思うのですが、初期の頃はそれでもよかったけれど、ここ10年位の間にPAはPAの役割がでてきて、レコ一ドとは違ったものが確立されてきたと思うんです。あくまでも、コンサートは見せるものというのがあって、この点を踏まえてほしいです。 

 

縄野:レコ一ドに合せたPAというのはおかしいと思いますよ。ただ、音質を変えてまでという必要はない。例えば、バイオリンなんか、コンサートへ行くとエレキバイオリンになっている。全部がエレキの楽器の音に影響されて、本来ならナマであるはずの楽器の音色までも変えてしまっているというのは、ちょっと情けない気がします。お客さんはナマのバイオリンの音を聴きたがっていると思うんです。 

 

受講者A:実際に鳴っている音とスピーカから出てくる音と絶対に違うんです。それをよりナマ音に近づけるのがPAの技術だと思うんです。ナチュラルな音を求める方は、ミキサーと話し合ってよりナチュラルにするということが先決だと思います。ただ、そういうものと違うものもあっていいということも認識してほしいです。 

 

──私たちは、万博のときPAの理想っていうのを掲げたんですね。それは、お客さんが帰るとき、あれ、今日はPAをしていたのかなって思うような音響にしたいということでした。 

 

受講者A:それも一つの方法論的理想で、僕も賛成ですけれど、現実問題ではかなり不可能に近いわけで、だったらどうしたらいいのかという風に進めた方がいいと思うのです。 

 

前田:今はナチュラルの概念が違うのではないかな。バイオリンの音をそのままとりますとギコギコの音で、そこでミキサーさんに依存する。よりバイオリンらしい音を出してほしいわけです。ナチュラルな音を聴かせるんじゃなくて、ナチュラルらしく聴かせることだと思うんです。たとえ電子楽器を使っても、いかに自然に聴かせられるかってことが問題だと思う。

 

 

 

ハネカエリの音が雑音に

 

山ロ:ステージ上のバンドの構成も相当無理して、見栄えで並べられますよね。そのこともあって最近のミュージシャンはハネカエリを要求してくるのでミキサーの方は苦労しているのではないかと思うのです。そしてハネカエリの音がお客さんに聞こえると雑音になってくる。 

 

受講者B:正に、その問題が非常に大きくて、下手するとお客さん向けのPAは要らないということもある。しかも、それはお客さんにとっては適正なバランスではなくて、ノイズに近いものになっている。その辺どういう風にしたら解決がつくのか、我々ミキサー側から言える範囲と企画側からミュージシャンに言える範囲と分担して解決したいですね。 

 

山ロ:モニタ一がないと歌えないとなると一番、商売上影響しちゃうんでね。 

 

受講者B:無いと歌えないと言われるとそれまでなんですよね。(笑)

 

──ハネカエリのことでは、僕もいつもみじめな思いをしており、なんで僕はミキサーなんて仕事を選んだんだろうと思うこともありますね。ミュ一ジシャン一人一人から注文を聞いて、ハネカエリの調整だけで1時間以上もかかっちゃう。それだけで汗だくで、そして「なんだ、きょうのミキサーは」なんて言われて、いじけちゃうんですよね。

 

 

 

「いい音」ってなに

 

受講者B:みんなが求めるのは「いい音」だと思うのですけれど、いい音の基準っていうのが、ミュ—ジシャン、プロデューサ、ミキサーそれぞれ違っているのではないでしょうか。しかし、プロデューサからもっと大きくしろと言われ、また別なところからはもっと小さくできないのかとくるわけです。(笑)僕なんか一つの逃げとして、いちいち言われたことはリハのときだけやるんです。でも本番になりゃ絶対こっちの勝ちですからね。(爆笑)その辺、誰が最終的にそのコンサートの音に対して責任持つか、企画側ではどうお考えなのかをお聞きしたいのです。 

 

前田:本番始まったらこっちのもんだって、(笑)それは正解だと思いますね。その位、権限があってもいいのではないですか。ク一ルファイブのレコーディングのミキサーはずっと同じ人です。その人がいないとクールファイブの音にならないのです。 

 

受講者C:僕はこの世界に入って4年ちょっとの駆け出しなんですけど、先程から聞いていて、やはりミキサーの人格、それが音となって、人の心を打つということじゃないかと思いました。ばかでかい音を出すことや、スピ一力を積み上げることは、ある意味で簡単だけれど、肝心なことは聴きに来てくれたお客さんをいかにして感動させて、明日から生きていく力になるような音創りが大切じゃないかと思います。 

 

縄野:私も今日は勉強になりました。PAとは音を伝えるではなく、音楽を伝えるものだ。その意味で、ナチュラルな音をナチュラルに聴ければ一番いいと思います。 

 

山田:いつだっか、ロックのミュ一ジッシャンがモニタ一スピーカに蹴りを入れまして、あわや乱闘という場面もありました。(笑)そうなると我々は一番こわいですね。下手すると公演中止の騒ぎになる。まあミュージシャンは自己主張が強いですから、皆さんの方からできるだけ歩み寄っていただければよくなるんじゃないでしょうか。 

 

前田:僕は、いいプレーヤほどミキシングについてもよく研究していると思いますよ。ミキサーの方から、もっと情報提供したり、啓蒙したりしてやることが必要なんだと思います。僕も、音楽業界へ入って、ミキサーさんとは隔たりがありましたね。もっとこのような研究会があっていいと思います。 

 

宿谷:ミキサーの方のご意見を聞けた感じです。本番が始まったらこっちのもんだというミキサーのプロの意識をよろしくお願いします。 

 

 

 

ミュージシャンは無神経で、スタッフはデリケート

 

山ロ:僕の体験から言うと、ミュージシャンは無神経であって、スタッフはデリケートだと思います。特に、音響の人たちに感心するのは、搬入、搬出の力仕事をやって、それで本番のときはコンピュータみたいに神経をピリピリさせてますね。先ほどの若い方のご意見を聞いて、自分たちは流されて仕事していたなと反省しました。 

 

阿久沢:聴衆の側からすれば楽しみに来ているわけで、これに奉仕していく中で音楽は成り立つわけですから、そういう意味からも責任を持つと同時に主張を持つということがないと発展しないのではと思います。そのためにも、こういう機会をもっと、出演者も加えてですね、音響のあり方を向上させてほしいと思います。 

 

悠:ここに集まっている方々の立場が違いますので、めでたしめでたしで終る必要はないと思います。僕はそれぞれの立場の人がナアナアになってほしくないと思うので、今日はお互いに好き勝手にものが言えて有意義だったと思います。でも、やっぱり、僕は「音楽」を聴きに来たのであって、「音」を聴きに来たんじゃないと叫ばなければならないコンサートが多すぎるってことを感じますね。レコードの音量は自分で操作できるけれど、ステージの音は聴き手は調整できない。だからPAの責任っていうのは非常に大きいんじゃないかと思います。

 

◆

 

八板賢二郎副会長:本日はどうもありがとうございました。今後も照明家、美術家などいろいろな人たちと話し合う機会を作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。最後に、お忙しいところをご出席して下さったゲストの皆さんに、感謝の気持をこめて拍手をお送りしたいと思います。ありがとうございました。 


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