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大きすぎる!コンサートの音

(1980年5月21日、NHK青山荘) 

 

野ロ久光氏の講演から 

 

──本日は野ロ久光先生をお迎えしました。野口先生はポピュラー音楽、ジャズの評論家で、紫授褒賞をお受けになり、ただいまスイングジャーナル誌のジャズ・ディスク大賞の委員長をされています。 

 本日お招きしたのは、スイングジャーナル4月号で、最近のPAの音は音楽を壊しているのではないかと述べられておられ、機会があれば私たちと話し合ってみたいということで、また我々も先生のポピュラー音楽論などを拝聴できればと思ってのことであります。それではよろしくお願いいたします。 

野ロ:はじめまして。先生なんて柄じゃないんですけど、一番年をとっていて、PAのない時代から音楽を聴いてきましたので、私は機械のことについては全くわかりませんから、そういうことについては何も申し上げられないし、逆に勉強させて頂ければと思って来ました。まあ、皆さんには随分失礼なことを書いたりして、今日はブン殴られちゃうんじゃないかと覚悟はして来ました(笑)。 

 

一人の意見として聞いてほしいのですけれど、いまコンサート会場でPAから出る音が、非常にいい音のときもあるのですが、平均的に音が大きいとか、よくないとか、私の仲間だけでなく一般の人からも聞くんですね。私もいろいろな会場、武道館から博品館みたいな小さいところで聴いても、音が大きすぎるというのが私の大体の印象です。 

これは時代の好みというのも一応あるように思うんです。若い人のロック系音楽など、大きな会場ではナマでは聴かれないわけで、また、電気楽器を否定するつもりもないのですが、平均して音が大きすぎ、そのために音が濁ってしまったり、会場内に音が回ってしまったりして、音楽から離れた音になってしまっていると思うんですね。 

 

この前の武道館でのABBAなんか、どうしようもなくって、逃げ出したくなりました。一番ひどかったのは、やはり武道館のディープ・パープルのときなんか、スピーカの斜め前ではいい音がしているのだけど、とにかく音が大きすぎて、終った後でも、しばらく一種の難聴現象で、話しをしても聞こえなかったですね。こういうのばかり聴いているとどうかなってしまうと思いますね。 

レコード会社の人なんかにも、「大体ここへ来て聴いてごらんよ」ってね。それで「僕はもう若くはないんだから、これ以上耳が傷んじゃ困るから(笑)家へ帰ってレコ一ド聴いた方がいいよ」って言ったんです。 

 

ほんとに耳が痛くなるような音を聴かされることも多くて、実際に、耳に紙をつめて聴いたことも10回以上あるんです。それで、まあまあ丁度よくなるんです(爆笑)。 

 

武道館もね、私も何十回と聴いて、非常にいいときもあるし、また、どうしようもなくて、我々の仲間なんか帰っちゃって、私は関係者に話して、「じゃ、何とか直します」というので、できるだけ最後まで聴くようにはしてるんですけどね。あの、真正面の1階で聴くとよくても、アリーナで聴くと概してよくないです。両サイドも二重に聞こえたりして、どうしようもないですね。 

 

同じことが、日生劇場の両側でも、芝居のセリフや歌詞がクリヤーでなくて、ひどいなと思ったりしますね。 

NHKホ一ルも場所によってずい分と違いがあることが多いですね。まあ、平均的にどこかいいところを想定しなきゃだめなんでしょうけど。 

 

武道館でもいいときがあったといいましたけど、概して音を抑えてあったときですね。10年前のジョン・バエズは、たった1人でギター持ってね。それから、ジョンデンバーのときは、向うからレコーディング•エンジニアがついて来て、とてもよかったです。 

ハ一ビー・ハンコックとチック・コリアのピアノ•デュオや、キース・ジャレットのピアノソロなんかも思いきり抑えて、けっこうよかったですね。 

 

この前、カウント•ベーシー•オーケストラが来ました。やはり、あまりPAを効かさないんですね。中央のソロマイクと、ベーシーがしゃべるときのマイクとベースに軽く入れるだけで、ギターなんか聞こえにくいけれど、それはベーシーの希望で毎回そうやっているそうです。それで、ある会場で見知らぬ若い人から、「PAが小さすぎるんじゃないですか」と言って来て、私も「そうだよな、だけど、カウン卜•ベーシーっていう人のねらいを考えて聴いてごらんなさい」って言ったんです。 

その、卜ランペットの音が、ほんとにトランペットの音なんですよ。PAを通すと、卜ロンボーンとの違いなんかはっきりしなくなったりしますよね。 

 

他のバンドだと、楽器全部にマイク立てて、結局クリヤーじゃなくなる場合がかなり多いと思いますけど。 

私も何回かアメリカに行ったんですけれど、向こうでどんな音してるのかなと、気になっていろいろ聴いてみました。劇場や野外の大きいところでも平均して音がいいですね。出しすぎてないところがわりといいです。 

サンフランシスコの近くのモントレーの野外会場で、5,000人位の本当は馬術競技場で、まわりが屋根つきの階段式の客席で、その片方に仮のステージを作って、あと全部客席なんです。田園コロシアムぐらいかな。飛行場のすぐ近くで、真上を 離陸した飛行機が通ると、全部聞こえなくなっちゃう。それもお愛敬みたいなんですけど。そこでPAがわりといい音してるんですよ。秘かに力セッ卜でとって来て聴いてみたら、ピアノなんかがいい音なんです。私たち、ジャズの好きな連中でやってるレコードコンサートのとき聴かしたけど皆びっくりしていました。 

 

建物は古いですけと、力一ネギ一ホ一ルは、わざわざ一番てっぺんに上って聞いても、まあまあでしたよ。 

 

日本のジャズ喫茶なんか、100人も入らないところで、ベースを大きく出したりしている所あるでしょう。そうするとベースだかなんだかわかんなくなっちゃう。ピアノなんかも充分聞こえると思うところで、マイク使っちゃってるでしょ。 

例えて言えば、ラーメンでも少し辛いのになれちゃうと、食べてみないうちから、コショ一などをかけちゃうでしょ。ああいう風になっちゃってるんですね。 

 

音も大きく、耳で聞くんじゃなくて、身体で聞くように慣れてしまうと、そうしないと満足しない、興奮しないとかね。それで音に埋没しちゃうとか、そういう状態を生理的に望んでるように思いますね。そういう人たちは、とにかく大きければいいんでしょう。 

 

日劇の演出やってる人が、古いシャンソン歌手のリサイタルを演出してる。前は帝劇でやったんですけど、ものすごくでかい音を出していて、「君、音でかすぎるよ」というと、「ここは大きいからこうしなきゃ駄目だ」と言ってたんですね。それが「こんどは博品館でやるから、ナマ音的にやる」というので行ってみたら、あの小さな小屋で、やっぱり大きすぎて、何とかしてくれって言ったんです。そうしたら彼は、「小さくすると迫力がないんでね」と言うんですよ。 

 

迫力っていうのは、音楽の中味のことで、音の大きさのことじゃない。私は、ポピュラーでも音楽として聴きたいんで、全部がフォルテである必要はない。全部がフォルテで、間もなきゃピアニッシモもない。そんなの音楽じゃないですよ。 

 

音楽の中の音のない部分だって、音楽の一部なんです。非常に意味を持っている。音楽っていうのは、いろいろな表情の変化があって、それがおもしろいわけでしょ。メロディ、ハーモニー、それに人間的魅力があって、音楽のおもしろさだと思うんです。 

 

昔の歌舞伎なんか、幕があいて、最初は聞こえなくてもいいセリフがあるんですよね。台本にして2~3ページ、そういうセリフがちゃんと書かれている。観客が静かになるころに聞こえてくる。昔の台本を書いた人はうまいですね。

 

落語なんかも、今はマイク使ったりするけど、あれも枕の最初の方はわざと小さな声でしゃべるそうですね。志ん生あたり、ほんとにそうです。 

 

そこへ行くと、今のコンサートは、音をバンとぶつけて、そのときはびっくりするけど、強い音ばかり出てくると、その音に何も感じなくなるんですよ。ところが、どうもこういう音楽が氾濫している。これはもう、手におえないですよ。人間の声は人間らしく、ベースはあの響きを聴きたいですね。ボンボンいうのが多いですけど。 

とにかく楽器の音っていうのは素晴らしいものを持っているんですよ。名器もあれば、安物もあるだろうけど。 

コンサートでは、ナマの音で聴きたいですね。いろいろ、会場の広さとか条件があってむずかしいのでしょうけど、それを補うということでPAがされれば一番いいと思うんですけど、いかがでしょう。 

 

日生劇場でね、ウェストサイド物語とか、ジーザスクライスト・スーパ一スタ一なんか、テ一プ(録音)を使っているんです。テープってのは、何十回でも地方公演でも使えるんで、しまいには只になっちゃう。そういうことをやらしている人がいるんですね。アメリカなんかでは、ユニオンが絶対に許可させないですよ。ミュージシャンの職がなくなるからね。日本ではユニオンなどないから(弱いから)、それをいいことにして経済的な理由でやっている。 

 

では、音が大きいのをどうすればいいかって、その音量を決めるのは、それができる人が決めればいいんですけど、そうじゃない人が、それが歌い手だったり、主催者やお客さんの若い人だったりかも知れないですけどね。 

今の状態で、皆さんが仕事をなさっていて、圧力というか、納得いかない大きい音にしろって言われることが多いんですか。 

 

《受講者が挙手したり、うなずいたりしました》 

 

野ロ:ああ、多いんですね。この前も、厚生年金会館でね、カンツォーネの歌手でね、ものすごい音なので「何とかしてよ」ってミキサーに言ったらば、「あの人が大きくしろ」と言っているんだと、歌っている人を指してね。「じゃあしょうがない」って帰って来ちゃいました。 

僕らは何も権限はないですから、拒否権を発動するよりしょうがないんです。(笑)正直にいいと思ったら、PAの人に「今日はよかったよ」って握手したりね。しょうがないときは、にらみかえして帰っちゃう。(笑)何か言うとはりたおされたらこわいですからね。 

皆さんは、いい音楽でありたいと心がけてやってらっしゃるのでしょうけどね。いろいろな人から指図があって、心ならずも大きくしてしまうんじゃないかと思うんですけどね。これは悪い習慣がついちゃってるのを戻すことのように、なかなか難しい問題だと思いますけどね。 

 

受講者:会場に合った音というのは、誰が決めるかというのが、常につきまとっていまして。我々の一つの手段として、リハ中は言うことを聞くけど、本番になりますと、かなり自由度ができて、我々の感覚的な仕事ができるんです。ところが、それをやりますと後が怖いということです。(笑)

そこで、評論家の先生方に、音を抑えて確かによかったとか書いて頂きますと(爆笑)我々と先生方の連携プレ一で、かなり解決していけるんじゃないかと思うんですが。 

 

野ロ:そりゃ、私たちは敵どうしじゃないんで、いいと思ったらできるだけ書くようにしてるんです。スイングジャーナルの連中にも、悪いときは悪い、いいときはいいと一行でも、PAが珍しく良かった(爆笑)と書けって言っています。 

まあ、私は、何とか話し合いとか、そういう機会を作るべきだと言ってたわけです。何とかよくしていくように、これからもこういう機会を、いろいろな人たちと持ちましょうよ。

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