東日本支部・劇場見学会のご案内(会員限定)
~劇場機構から学ぶ歌舞伎の世界~
歌舞伎は無形文化遺産に指定されている日本の代表的な伝統演劇であり、オペラはイタリアで誕生してヨーロッパを中心に栄えた伝統的な演劇で、共に同時期(17世紀)に創始されています。
この日本とヨーロッパを代表する“歌舞伎とオペラ”について、劇場の見学を通じて学ぶのが今回のテーマです。
舞台機構等は国立劇場舞台技術部の柳下寿樹さん、大道具製作場は田中浩さん、音響は石井真さんが、細部まで解説していただきました。見学会終了後に交流会を開催しました。
日 時:2019年7月22日(月)17時〜18時30分
舞台機構、大道具製作場、客席、音響調整室等を見学(所要時間90分)
主 催:一般社団法人日本音響家協会東日本支部
■国立劇場の舞台機構の概要
1966年に開場。大劇場は歌舞伎の上演を主とした舞台で、舞台装置の転換を早めるために回り舞台や迫り(セリ)を活用している。
西洋の舞台を参考にしていて、上手と下手の舞台袖を舞台の間口と同等にして大きな舞台装置を車の付いた台の上に組んで舞台袖に格納しておき、押し出して装置の転換をするようにしている。
音響は、セリフを部分的にハース効果を応用したステルスSR(生のように聞かせる)している。
■国立劇場見学会に参加して
岩野浩昭
今回、東日本支部主催の国立劇場見学会に参加させていただきました。普段のイベントで会場の下見では、受付場所や入場者の導線や音響卓の配置場所、あるいは搬入経路など会場設営に関することを中心に点検・確認までですが、今回の見学会は、そのホールの構成や特徴などを、その部署の担当者職員さんから直接、お聞きすることができ、貴重な体験でした。
国立劇場と言えば、歌舞伎などの伝統芸能の上演が多くされていますが、会場全体に演者さんの声が届くための仕掛けも見ることができました。思わず「へぇー!なるほど!」と、うなるばかりでした。直径20mの回転舞台と上下するセリ。使い方は次の場面を回転舞台の後方(半円部分)にセットしおいて回転させて転換したり、または地下に下げたセリに舞台装置をセットして上げてきたり、その逆など、演目によって様々あるようです。
舞台セットの背景画などは、舞台下(地下)で作成されているところも紹介されました。演者さんより目立たず控えめに、しかし風景として溶け込ます技法も簡単そうで難しいのだろうと拝見しました。
音響担当として気になる音響室は、難しそうな機材が所狭しと陣取っていました。ミキサーは3台有り、不具合が発生しても他の2台でバックアップができるようにセットされていることなど、最新の技術が導入されていました。
音響担当者は演者さんとパフォーマンスを作り出すといわれていますが、その状況が大変良く知ることもできました。つまり担当者は、演者さんのセリフを覚えていて、例えば次の展開の太鼓の音や笛、効果音のタイミングを台本上ではなく、身体で覚えているということもお話しされていました。たぶん、演者さんとの呼吸もどこかで合わせているのだろうと感じました。
あっという間の見学会も終了し、お約束か分かりませんが、参加者での懇親会にも参加させていただきました。懇親会では各々見学会の感想や驚いたお話し、失敗談や笑い話、うんちく、知恵袋などお話をお聞きすることが出来ました。この懇親会は、活字にはできないお話もあって、下戸の私も楽しいひと時を過ごすことができました。
企画されました東日本支部の事務局の皆さん、快くご対応していただきました国立劇場の担当職員の皆さんにお礼を申し上げます。ありがとうございました。
▲舞台袖に吊ってある定式大道具
▲劇中の音楽を演奏する下座(げざ、黒御簾=くろみす)
▲見学者は最大のセリ、大セリに乗って地下の大道具製作場に移動
▼大道具製作場
▼音響調整室
▼花道で見学者たち